前回は、「動くこと」の重要性について運動器を取り扱う整形外科の立場から「健康に影響する運動のエビデンス」について述べさせていただきました。
ご存知のように、喫煙、肥満、運動不足などが生活習慣病に関係すると言われています。
喫煙、肥満、飲酒、運動不足と腰痛の関係をみた報告は非常にたくさんありますが、エビデンスレベルの高い研究は少ないと言わざるを得ません。比較的質の高い論文をまとめて解析する方法がメタアナリシスという統計学的な手法ですが、その結果、腰痛と生活習慣病の関係がいくつか示されています。
まず、体重は標準体重よりも痩せていたり、肥満があると腰痛発症リスクがあり、健康的な体重の管理が腰痛の予防に好ましいとされています。喫煙と飲酒は腰痛発症に関係し、有病率にも影響すると指摘されています。
運動習慣と腰痛発症について検討した研究では熱心な運動習慣のある高齢者は腰痛の発症率が低く、運動量と腰痛発症の予防には統計学的に有意な相関を認めたと報告されています。
つまり普段運動をしていない人に腰痛が発症しやすいと言えます。一方、腹筋や背筋などの体幹筋力または腰の動きと腰痛発症には一貫した関係が見られていません。すなわち、腰痛予防には体幹筋力そのものよりも運動習慣のほうが重要であり、運動不足が腰痛発症の危険因子であると言えます。
私は喫煙しませんが、酒は大好きで、もちろん肥満です。では腰痛があるかというとほとんどありません。ごく稀に、酔っ払ってソファで寝てしまったりすると腰痛が出て、湿布のお世話になりますが、すぐに治ります。
通勤はバスを利用して、できるだけ歩くようにしています。休日には1−2時間散歩して体を動かすようにしています。また、体幹筋力そのものは腰痛発症に影響しないということですが、6年前から毎日腹筋・背筋100回行っています。やはり体幹筋力も大事ということを検証すべく前向きに体幹を鍛えています。
ちなみに、最近、私の腰椎MRIを見た、以前一緒に研究していた療法士は「凄い」と言ってくれたので意味はあるかと思っています。残念ながら、この前の病院の健康診断でもしっかり肥満を指摘されました。生活習慣病と腰痛の関連はあるようですので今の運動を継続することで腰痛発症を予防したいと考えています。腰痛に関しては運動が生活習慣病に打ち勝つのではと考えています。
生活習慣病を指摘されている皆様で、腰痛に悩まされている人がいらっしゃいましたら、積極的な運動を勧めます。しかしながら、大事なことはしっかりとした腰痛の診断ですので当院への受診をお勧めします。
次回は、「腰痛の新規発生ならびに慢性化の危険因子」について述べさせていただきます。